謹んで新春をお祝い申し上げます.
ビブリオバトル普及委員会代表に就任して始めて迎える新年,新年の挨拶を申し上げるにあたって頭に浮かんだ言葉は「ドッグイヤー」でした.寅年の新年に何を言い出すのかと思われる方もいらっしゃるかもしれません.
もちろんこれは戌年の話しでは無く,「犬の1年の成長が人の7年に相当する」という,あのドッグイヤーの話しです.IT業界などで技術革新の速さを象徴する言葉としてしばしば用いられます.
ビブリオバトルに関しても,黎明期からの歴史をふり返るときこの言葉を思い出さずにはいられません.
私が公の場で「ビブリオバトル」という言葉を耳にしたのは2009年9月のこと.お茶の水大学で開催されたヒューマンインタフェースシンポジウム2009という学術講演会での谷口忠大先生のご発表でのことでした.
言うまでもなく谷口先生はビブリオバトルの発案者その人です.その後まもなくビブリオバトル普及委員会が設立され,ビブリオバトルはその知名度を急速に高めてゆきます.
私が関わってきた北海道地区の普及活動もこの頃から始まりました.
2011年,のちにビブリオバトル北海道のブレインとして活躍して頂くことになる(株)トライ・ビー・サッポロ(当時)の金山敏憲氏の協力を仰ぎ,北海道でのビブリオバトルのお披露目イベントを打つことになりました.
札幌市立大学の細谷多聞先生を始め,室蘭工業大学ビブリオバトル部初代部長の森田拓愛氏,紀伊國屋書店札幌本店(当時)の原元太氏,NPO法人北海道冒険芸術出版の堀直人氏など,多くの頼もしい賛同者に恵まれて順調に滑り出しました.
金山氏より「(まだ知る人の少ない)ビブリオバトルという言葉を直感的に理解してもらうために,サブタイトルを付けた方が良い」というアドバイスを頂き,イベント名称は「ビブリオバトル札幌 ガチンコ書評合戦」に決定.会場は,JR札幌駅に隣接する紀伊國屋書店札幌本店さん1階のお洒落なオープンスベース,「インナーガーデン」を使わせて頂けることになりました.
イベント当日,会場を埋めたギャラリーの熱気や,大人たちに混じって参戦し見事にチャンプ本を勝ち取った小学生の笑顔が今も思い出されます.
全国に目を向けると,大学生による全国大会が開催され,現代用語の基礎知識で紹介され,小学校の教材にも登場し,と,まさにドッグイヤー的に発展を遂げてきたのは皆さんご存じのとおりです.今では私が勤務している大学でも新入生の多くが,「知っている」もしくは「やったことがある」と言うまでに一般に知られるようになりました.
2019年末の中国武漢での流行に端を発したCovid-19は,このように発展を遂げてきたビブリオバトルの歴史にも影を落とすことになります.多くの対面イベントが中止に追い込まれ,コミュニティー型の集まりも自粛が求められる事態となってしまいました.ヒトとヒトとの繋がりを大切にしてきたビブリオバトルコミュニティーにとっては危機的な災禍といっても過言ではありません.
幸いなことにビブリオバトルコミュニティーは,その歴史を通してこの危機を乗り越えるだけではなく,イノベーションをももたらす力強さを身につけていました.
2021年,オンラインの特性を活かした試みであるBib-1 グランプリ 2021(ビブワン グランプリ)の成功は,ビブリオバトルのエンターテイメントとしての新たな可能性を示してくれました.
前年に引き続きオンラインで開催された大学ビブリオバトル・オンライン大会2021は,企画・運営スタッフの創意工夫と努力によってより洗練されたものになりました.ネットを通してのライバルたちの邂逅は爽やかな感動を与えてくれました.またなんといっても,COVID-19の感染拡大の中,創意工夫をこらしてイベントを盛り上げた「生駒市図書館と生駒ビブリオ倶楽部」の皆様が見事,Bibliobattle of the Year 2021 大賞を受賞しました.
そして2022年.「ドッグイヤー」的に発展するビブリオバトルの歴史の中,今年もまた重要な1年になりそうです.4月にはビブリオバトル公式ルールの改定が予定されています.感染再拡大防止と社会活動再開の両立という制約の中,ビブリオバトルのさらなる可能性の模索にも期待がかかります.
本年もビブリオバトル普及活動への皆様のより一層のご理解とご支援をお願いいたします.
最後になりましたが,2022年のみなさんのビブリオバトルライフがハッピーなものになりますように!
2022年 新春吉日
ビブリオバトル普及委員会代表
須藤秀紹(すとうひでつぐ)