なぜ自分で本を選ぶ必要があるのか?
自分で本を選ぶ(本を通して人を知る)
ビブリオバトルにおいて、実は大切なことの一つが「参加者自身が自分で本を選ぶこと」です。
授業などで利用するコトを考えると、先生が課題図書を設定することが考えられますが、これは得てしてビブリオバトルの可能性を一部損ねてしまうことがあります。
どういうことでしょうか?
「参加者が自分で本を選ばないと・・・・」
発表者の人となりに出会う機会を減らしてしまう・・・・
書籍に出会うチャンスを減らしてしまう・・・・
これは、本来、ビブリオバトルを通して
発表者の「人となり」に出会える!
新たな本に出会える!
という楽しいコトがある ということを意味します。
順番に説明してみましょう。
1.発表者の人となりに出会える!
ビブリオバトルは様々な標語を持ちますが、その中で重要なものの一つに「人を通して本を知る、本を通して人を知る」というものがあります。
ビブリオバトルは 書籍情報の共有 ということを超えて、人と人がお互いのことをわかり合うコミュニケーションの場づくりを目指しています。
誰かが読んだ本、好きな本を紹介するということは、実は「僕はこういう本が好きで、こういう考えを持っている人なんです」というコトを同時に言っている事になります。
つまり本の紹介をとおして「自己紹介」になってるわけなんですね。
よく、ビブリオバトルに参加してると1年近く付き合っていた友人でも「へー。こいつこんなコト考えてたんだ!」と、気づくことも多いものです。
これが、実は、その後のコミュニケーションを活性化させるキッカケになったりするんですね。
ところが、「課題図書」を与えてしまうと、その人は 「自分について語る大きなチャンス」を逃してしまうのです。
ちょっと情緒的な話しかもしれませんが、多くの人は「自分のコトを分かってもらいたい」という欲求を持っています。
自己承認欲求と呼ばれることもあるでしょう。
マズローの欲求五段階説なんかでも、結構上位の欲求として認識されてます。
自分の好きな本を紹介しあうことで、お互いに理解し合うチャンス。
そんなことに ビブリオバトルが貢献できたらいいですね。
2.新たな本に出会える!
1.にくらべると本質ではないかもしれませんが、ビブリオバトル のおもしろさの一つは「本との出会い」です。
出会いっていうのは、いつも突然なもの、読めないもの、そして人と人の出会い・繋がりからの「縁」によるものだと思います。
課題図書を与えるような先生は きっと 広範な知識を持ち、参加者に読んでもらいたい本もいっぱいあるでしょう。
しかし、そこで課題図書を与えてしまうことは、実は、自ら本との出会いの範囲を 制限し、可能性を狭めてしまっている可能性もあります。
ビブリオバトルは 民主主義的でオープンマインド なのがミソだと思います。
情報はコントロールしようとしないで、オープンな中で多様性と出会いを楽しみましょう。
効率性より多様性、静的な相互作用より動的な相互作用、その中でこそセレンディップな何かも見つかるんじゃないでしょうか?
とはいえ、その場が無法地帯になってしまうのは開催者としては、恐いところ・・・・
そんなときは
「ゆるいテーマを決める」
「候補としての本の例を決める」
「駄目な本を決める(例えば、雑誌はダメ、マンガはダメ、18禁はダメなど)」
などの制約をかけてはどうでしょうか?
あと、これは チャンプ本 に関わることでもあるんですが、ビブリオバトルはその仕組みを回していくと 実は ほっといても自然に、紹介される本に適度な秩序が現われてきます。
こういう辺りも面白いポイントですね。
是非、オープンマインドで 本に媒介された コミュニケーションを楽しみましょう!
文責:谷口忠大 2010/02/17