5分の使い方

ビブリオバトルは簡単だ!?~ 5分間の流儀 編 ~

2009/9/4 吉野英知

ビブリオバトルを始めようと思う人が、ちょっと 立ち止まるのは
「僕に5分間で楽しいプレゼンテーションなんて出来るんだろうか?」
ということかもしれません。

ビブリオバトルは単に良い本を探して読むだけでは、栄光あるチャンプに輝くことはできないかもしれません.
その良さ、魅力、面白さをいかに5分という限られた時間に詰め込めるかが、チャンプ本と単によい本の差となってきます。

普段、仕事や学業でプレゼン慣れしている人を除けば、何時間もかけて読んだ本の魅力や面白さを、まだ読んでいない他人に5分で伝えるのは、難しく感じると思います。

そこで、ビブリオバトル初心者が、最大限に本の魅力を伝え、オーディエンスを熱狂の渦に巻き込んで、チャンプの栄光に輝くための、「流儀」を伝授しましょう(笑)!!

1.「1-3-1」の構成

5分という時間は、プレゼンターから見ると短く感じますが、一方的に聞かされる聴衆側に立つと、意外に長く感じます。

ですから、5分間にメリハリをつけないと、聴衆は飽きてしまいます。
また、無計画に話しているのがわかってしまうと、聴衆は集中して聞くのがしんどくなってきてしまいかねません。
(場合によっては、「無計画さ」が魅力になることもありますが・・・)

適切な時間構成はと言いますと、個人差がありますが、「1分→3分→1分」という構成が、まずは一番意識しやすいかと思います。
初めての皆さんはまず、「1-3-1」の構成を意識してプレゼンに取り組んでみてください。

2.最初の1分で聴衆のハートを掴め!

「1-3-1」の時間構成にした場合、最初の1分で何を話すのか?

結論から言えば、この1分は、聴衆の興味を引き付けることに集中します。

最初の1分は、聴衆の意識はあなたに集中しています。
あなたのプレゼンを聞くか、聞いたフリをするか、どうしようか迷っている時間です。

ですから、いきなり本の内容に深く入るのはリスクが高すぎます。
本の内容に深く入ることは避け、プレゼンに聴衆の意識を引き込めるような準備運動の時間と捉えましょう。

おすすめとしては、本のタイトルのキーワードについて、簡単に説明するのが最もオススメです。
著者の人となりを紹介するのも有効な手段です。
その本との出会いを紹介するのもよいでしょう。

いろんな人のビブリオバトルの発表を見ていただくと分かりますが、上手いプレゼンターは本自体をなかなか見せなかったりします。
まるで関係のないような話をしておいて、徐々に本のテーマにちかづけ、満を持して「バーン!」と本を出すというのも、ありがちな 手ですね。

ここで自分のペースをつくれるかが、チャンプへの第1歩です。

3.中盤の3分:「ポイントは3つ!?」

中盤の3分のマネジメントは実は非常に難しい問題です。

というのも、5分というのは絶妙な時間設定でして、本当に興味がある場合を除けば、聴衆の意識は別のことに飛びがちです。
次に自分が発表者の順番だと、自分のプレゼンの内容を考えたりしていることがあります。

ですから、中盤に入る前に「この本で皆さんに伝えたいポイントは3つです!(3つあるから最後まで聞いてくれ!)」と最初にブチあげてしまいましょう。
そうすると、聴衆の頭には、「あー、ポイントが3つあるのね」と、最後まで聞く準備ができます。

その上で、3つのトピックについて、読んだ感想なり、意見をしゃべっていく。
1トピック1分ですから、聴衆も飽きないし、タイムマネジメントもわかりやすくてよいかと思います。

ポイントを1つや2つにすると、3分を持たせられる深さが必要となりますし、逆に4つや5つだと、十分に話せないので、3つが妥当な線、というのが経験則です。
箇条書きにしてメモとして持っておくと、話がそれたときにも強引に戻すことができます。

もちろん、これも必勝法ではなく、それぞれの人によって、変化球的なスタイルが出てくることがあります。

そういうスタイルが参加者の個性となることも多く、よりビブリオバトルを楽しくする魅力でもありますので、これを基本としながらイロイロ試してみましょう。

負けたからって、悔しいだけで、特に世の中の評価が下がるわけでも、通信簿に響くわけでもないのですから~

4.最後の1分:まとめあげる

さて、最後の1分ですが、基本的に新しいトピックは必要ありません。
もう聴衆はこの4分でお腹いっぱいです。
ですから3つのポイントをおさらいするので十分でしょう。

なぜ、この「おさらい」が重要か。
実は、この最後の1分の段階で、はじめの3分半くらいの内容は、聴衆の頭から流れ出てしまっています。
ですから、ここで3つのポイントを聴衆の頭に鮮明にインパクトさせる必要があるのです。

時間に余裕があれば、本全体の感想や足りない点など、本の内容から一歩引いた目線でのコメントを付け加えましょう。

ラスト一分でどんでん返しをするという、変なプレゼンターも居ます.
それはそれで面白いですヨ。
オーソドックスなスタイルとは言えませんが・・・・。

あと、最後の言葉を言い切った際に「チンチンチーン」と終了のベルがなると、どよめきが起きます。
そういうプレゼンテーションはやっぱり高評価をうけますね。

5.聴衆に投げかける

よくありがちなのが、5分間を一方的に話しきって終わってしまうパターンです。

やむを得ないのですが、双方向での議論を是とする趣旨からすれば、物足りない感があります。

そこで,冒頭で「聴衆に投げかける」をオススメします。
「たとえば○○について、どんなイメージを思い浮かべますか?」などと、あえて聴衆に投げかけるのです。
聴衆に漫然と聞くだけではダメなんだと意識させ、考える時間を与え、一瞬で自分のプレゼンに意識を引き込ませてしまうのに、大変効果的な方法です。

質問のコツとしては、回答者が悩んだり押し黙ったりしないよう、即答できるレベルを狙います。
その上で、「ね、そう思うでしょ。ところが実はこの本では・・・」という展開が、古典的ですが、最も興味をひきます。

こういう手法は、よくコミュニケーションやプレゼンテーションのハウツー本でも紹介されたりしますが、「いざ」という時や大切な仕事の場で練習するのは難しいモノです。

ビブリオバトルはインフォーマルなたった5、6名の友人同士のプレゼンテーションです。
失敗を恐れることはありません。
ぜひ、いろんなスピーチ手法を試してみましょう!

6.単なる書評ではない。思いを込めた書評である。

アマゾンのブックレビューではありません。
あなたに冷静な本の分析など、本当は誰も求めていません。
求められているのは、本を読んであなたがどう思ったのか、その本は聴衆にもぜひ読んでほしいのか、その判断とあなたの提案力を求めているのです。

しかし、その中には、当然、論理的に納得できる評価の理由が必要です。
ここが、単なる書評ではない、ビブリオバトルであるゆえんともいえます。

7.普段からビブリオバトルを意識した読み方をしよう

読んだときに、漫然と読むのではなく「これをもしビブリオで発表するならどうするか」を考えてみてください。
本の流れ、著者の主張、発表すべき3つのポイント、こうした内容が頭の中にスーっと入ってくると思います。

最近、脳科学の視点から教育や学習の場でも「アウトプットを意識した学習」が注目されています。
ビブリオバトルはわざわざ原稿を書く必要もありません。
小学校の時にさせられた、あの苦しい読書感想文を書く必要もありません。

「おしゃべり」という一番簡単なアウトプット法で、みなさんの効果的な読書を推進するのです。

8.本のセールスマンではない。

アフィリエイトでもないので、聴衆がたとえ買ったとしても、あなたには一銭の得にもなりません。
またビブリオバトルはあくまで知的好奇心と本の審美眼(とプレゼン能力)を競う場であり、
「とにかく買ってください、とにかく読んでください」
というモーレツ営業マン的なアプローチはダメです(もしかするとそれでもチャンプに輝くかもしれませんが、公式見解としては、そうした手法は是としません)

「こんなに面白いんだけど、興味あるなら読んでみる?なんなら貸してあげてもいいわよ」
ぐらいに知的好奇心の琴線にそっと触れるぐらいのツンデレ具合がベストではないかと個人的には思います。

9.照れずにハイテンションで!?

動画として記録する場合は特にそうですが、カメラと聴衆を常に意識してプレゼンしましょう。
身振り手振り、オーバーリアクション、抑揚のある大きな声、呼びかける姿勢、カメラ目線、その全てが必要な要素です。
照れてモジモジしないこと。

「なんでコイツは、たかが一冊の本の紹介で、こんなにハイテンションに喋れるのだろう?」

と思わせるくらい、テンション高く、楽しくやることが重要です。

そんなにハイになれるほど面白い本なら、中身も面白いに違いない、そう類推してしまいますから。

最初にカラ元気を出し、そのまま5分間勢いで押し続けるくらいであってほしいです。

突き詰めると「芸風」ですが、基本はハイテンションですね。

視聴者に笑顔を与える雰囲気作りが、とても重要です。



文責:吉野英知