新年のご挨拶 2014年

謹んで新年のご挨拶を申し上げます.
旧年中はビブリオバトルの普及活動にご支援いただきました皆様に,謹んで御礼申し上げます.

また,昨年,一度でもビブリオバトルに参加し,その場所,その瞬間の「コミュニケーションの場」に貢献くださった皆様も,謹んで御礼申し上げます.

昨年,2013年は,ビブリオバトルという活動が全国的に広まった年だと言えるのではないでしょうか.

2010年から普及が始まったビブリオバトルも普及4年目を迎え,昨年7月にはついに全国47都道府県での開催が確認されました.また,10月には初めて10月1日~10月31日までの31日前日において「どこかでビブリオバトルが開催されていた」という全日開催が確認されました.

全国に広まる中で,きちんとした「ビブリオバトルの考え方」を伝えるツールの重要性も高まってまいりました.時宜を得て普及のツールとしても,「ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム」(文春新書),「ビブリオバトル入門- 本を通して人を知る・人を通して本を知る」(インフォスタ)が相次ぎ出版することが出来,全国の多くの方にビブリオバトルの面白さをお伝えすることが出来たのではないかと思います.

全国への普及の先は,全世界への普及へと夢は広がります.2013年には,海外展開とまでは行きませんでしたが,様々な場所での英語でのビブリオバトル開催や,留学生と日本人の交流のためのビブリオバトル,台湾でのビブリオバトル開催事例などがありました.少しずつではありますが,日本国,日本語という枠を超え,Bibliobattle の面白さを全世界へと広めていく糸口が見え出しているようにも思います.

また,新たな層,新たな領域への普及も特徴的に進んだ年であったと思います.
具体的には行政,学校教育,図書館等の公的セクターにおいて,ビブリオバトルの推進姿勢を明確にうちだされることが増えてきた点が挙げられます. 年始の猪瀬直樹東京都知事(当時)による,「東京都全高校へのビブリオバトル導入の働きかけ」に始まり,様々な市町村,都道府県でも教育委員会や関係期間がビブリオバトルの積極的な教育導入の検討,実践を始められました.また,5月には,文部科学省「第三次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が閣議決定され,その中で,ビブリオバトルの普及を国としても期待する旨の記述がなされました.公共図書館では2012年のライブラリーオブ・ザ・イヤー2012大賞受賞の影響も受けつつ,様々な館において実践の輪が広がってきたように思われます.公立図書館のみでも既に全国79館での開催が確認されております.

さて,一方で急速な普及は,現場レベルの摩擦や誤解も少なからず生んできたという話を耳にしてきました.

この理由は,準備時間が短いことにより,担当者がビブリオバトルを自ら実践し理解することもなく,誰かに「させる」ことを優先してしまったことによるものが多かったようです.特に学校の場において顕著であったようです.ただ,この問題も徐々には解決されつつはあるようです.
中学や高校,図書館等でも様々なスタイルでの開催がなされていますが,それぞれの状況はそれぞれが持つ前提,環境に応じて異なります.それらの現場で,ビブリオバトルをどのように活用し,実施していくかについては,それぞれの場での実践,理解,研究,そしてその知見の共有が引き続き求められます.自主的な参加に基づく「ゲーム」としてのビブリオバトルが,しっかりと理解され,楽しまれるようになっていくことを期待します.

テレビやラジオでもビブリオバトルの番組が放送されることも増えました.また,雑誌,新聞,用語集等のメディアでの掲載も多くありました.しかし,その中でビブリオバトルに対する十分な調査や取材なく,誤解を広めるような事例が少なからずあったことも,残念ながら事実でした.「広く広まること」と,「正しく理解し,しっかり楽しんでいただくこと」の両立の難しさを実感させられた年だったと言えるでしょう.

「読書感想文の発表会」でも,「プレゼン技術を戦わせる書評バトル」でもない,ビブリオバトルの本質を,より広く,より多くの人々に,ご理解いただくための努力はこれからも求められていくのだと考えております.

飲み会でビブリオバトル,仲間との読書会でビブリオバトル,書店でのビブリオバトル,家族でビブリオバトル,クラスで班にわかれてのビブリオバトル,マニアックなジャンルでのビブリオバトルなどなど,行政ともマスメディアとも関係の無いところでm多くのビブリオバトルがカジュアルに楽しまれています.このような草の根の広まりを第一に,2014年も「楽しいビブリオバトル」の普及に微力ながら貢献していきたいと考えています.

年の初め,ビブリオバトルを楽しんでくださる皆様のご支援とご協力に感謝申し上げると共に,皆様のご健康とご多幸をお祈りして,新年のご挨拶とさせていただきます.

2014年1月1日

ビブリオバトル普及委員会代表

谷口忠大