新年のご挨拶 2013年

謹んで新年のご挨拶を申し上げます.

昨年,2012年はビブリオバトルという概念,および,ビブリオバトル普及委員会にとって飛躍の一年であったと振り返ります.

2011年で各地へと活動が広まった各種団体でのビブリオバトルの開催は2012年には種類,回数ともに増加し「全都道府県でのビブリオバトル開催団体の確認」も残すところ群馬県と福井県を残すのみとなっております.

http://www.bibliobattle.jp/chiiki-jouhou
# 情報お持ちのかたおられましたらご連絡ください.

全国に散らばるボランティアメンバー,ビブリオバトル普及委員の数も100人を超えました.
さて,2012年は開催団体の「種類」の増加という点におきましては,公的な機関での拡大が目立ったように思います.

2011年は奈良県立図書情報館様を初め数える程度でしかなかった公共図書館,大学図書館での開催は2012年度で一気に広まり,年末には図書館業界の栄誉ある賞であるライブラリーオブザイヤー2012の大賞をビブリオバトルに戴くことになりました.
http://www.iri-net.org/loy/loy2012.html

図書館が受ける賞をビブリオバトルという概念的存在が戴けたことは,大変光栄に感じております.
一方で,この受賞は,現在の情報化社会における本という存在の使命・位置づけと,図書館というハードウェアへの問題提起を含んでいるように感じ,私自身としても情報化社会の一端を担う存在として,身が引き締まる思いでもあります.

また,2012年は小中高等学校へのビブリオバトルの利用が拡大した年でもありました.

小中高等学校の国語の時間や,図書委員会等でのビブリオバトルの活用はビブリオバトルの一つの可能性を示すものです.

ホームページから活動を発信されている例としては

京都府向日市の西ノ岡中学
http://www.kyoto-be.ne.jp/nisinooka-jhs/
http://www.kyoto-be.ne.jp/nisinooka-jhs/3nenn2kumibiburibatoru1217.html

立命館小学校
http://www.rits-primary.com/topics/2012/10/post_381.html

などがあります.

東京都が都立高校を対象に都立高校生言葉の祭典においてビブリオバトルの大会を開催されました.
年末には猪瀬東京都知事がこれを私立を含めた全高校に拡大することを宣言されました.
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012122602000129.html

高校におけるビブリオバトルの活用は,2013年の一つのトピックとなるでしょう.
東京都のみならず,幾つかの他府県においても類似の取り組みは生まれつつあります.

一方で,このような公共の場,教育の場におけるビブリオバトルの拡大が続く中で教育の場という特殊性に流され,「ビブリオバトル」が「異なる何物か」にならぬように一定の注意を払っていく必要はあろうと考えています.

ビブリオバトルは参加者全てに役割を与え,主体的な語りによりコミュニケーションの場を作っていく仕組みです.

参加者の本に対する選書と解釈と語りの自由に基づく,自律性と多様性こそビブリオバトルの魅力を特徴づけるものです.

一方で,教育の場はしばしば「強制」を旨とするものとしがちであります.

読書推進という大人の善意は,時として「読め」という安易で他律的な命令形に変化してしまいます.

このような立場とは決別しつつ,ビブリオバトル普及委員会の目的として掲げる「ビブリオバトルの普及を通して,世の中のコミュニケーションや知識共有,人々のつながりを活性化させること」を様々な領域に於いて実現していければと考えています.
http://www.bibliobattle.jp/biburiobatorufukyuu-iin-kai--kiyaku

あくまで遊びのような楽しさの中で,権威に拠らず,自分たちの力で本を探しそれを共有することで,つながっていくアクティビティこそビブリオバトルではないかと考えています.

その意味においては,2012年を通して,定着してきた各地のカフェや書店,大学,古民家を含んだ様々なスペースでの草の根のビブリオバトルが,本と人,人と人との出会いを演出してきたことはとても素晴らしい事であったと思います.

2013年は2012年に広がった領域での活動をさらに確かなものとしていくと同時に,より広い地域で,広い年齢層,広い業界において浸透することが目指されます.

全国に普及してきたとは言え,各都道府県毎にみると,まだまだ,強い濃淡がありますし,まだまだ,潜在的に利用価値が高いであろうはずなのに,浸透していない分野も多くあります.

例えば,外国語学習,異文化交流,シニア世代の交流,異なる年代層のコミュニケーション促進,婚活(?)など,書籍と直接関係の無い分野での活用可能性はまだまだあります.

すでに浸透してきた領域での利用を定着させていくとともに,これらの新たな領域においてビブリオバトルの活用を実践を通して検討していくことも2013年の課題といえるでしょう.

ビブリオバトルは多少名が知れるようになってきたとは言え,まだまだ成長期,人に例えるなら幼稚園児か小学生程度の存在だと思います.

2013年もビブリオバトルを好きになって下さった多くの人々の手で,のまだ若い概念を少しずつ一緒に育てていけ行ければと思います.

「人を通して本を知る.本を通して人を知る.」

このシンプルなフレーズを口にしながら,このフレーズに共感してくれる人々の輪を,焦ること無く少しづつ広げていければと思います.

年の初め,ビブリオバトルを楽しんでくださる皆様のご支援とご協力に感謝申し上げると共に,皆様のご健康とご多幸をお祈りして,新年のご挨拶とさせていただきます.

平成25年1月1日

ビブリオバトル普及委員会 代表 谷口忠大